ピアノをある程度の期間学習する人にとってワルツとマズルカは避けられない曲です。

比較的取り組みやすい曲がいくつもあることからショパンの作品の導入として使われることが多いこの2つの楽曲ですが、では、ワルツとマズルカの違いはどこにあるのでしょうか?

特にマズルカはワルツよりも短い曲が多い(そして作品数もワルツよりずっと多い)ことから、まずはマズルカを弾いてみよう(生徒に弾かせてみよう)とお考えになる先生は多いかと思います。

しかし、マズルカは三拍子の中では難しい部類に属するものです。私の師匠が、私に初めてマズルカ作品を課題に出した時に漏らしていたのは「マズルカはワルツと違って大人じゃないと弾けないのよ」という言葉でした。

当時はよくわからなかったこの言葉、30年以上経過した今になって身にしみて感じます。

ワルツとマズルカの最大の違いは、拍の重みの置き方にあります。ワルツが1拍目に重心が置かれ、踊る時はそこを軸にしてくるりと回るというのに対し、マズルカの重心は1拍目ではないこと、踊る時にくるくる回らないという違いがあります。

マズルカの歴史を紐解くと、マズルカがポーランド発祥なのは間違いのないことですが、19世紀のヨーロッパ各地で流行していた踊りということがわかります。そしてショパンがパリでマズルカ作品を多く作曲したということも影響しているのでしょうか、フランス各地で踊られていたという記録も見られます。フランスで踊られていたマズルカは、フランス風にアレンジされたものでもありました。

その影響もあってか、19世紀フランスの作曲家は自作品にマズルカを取り入れることがあり、ジゼルやコッペリアといったフランスのバレエ作品にもマズルカが出てきます。

それらのマズルカ作品は洗練された芸術作品でもあり一見民族舞踊とはかけ離れたものとはなっていますが、拍の取り方は明らかにワルツのそれとは違います。ワルツと同じように演奏することはできません。

ショパンのマズルカには「ワルツかな?」と思わせる伴奏形のものがあることはその通りですが、それでも旋律を見るとマズルカの拍感が合いますし、伴奏も完全にワルツとは同じではありません。

このように三拍子を区別して演奏することは、作曲家の意図を汲んだ演奏への第一歩でもあります。

 

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