先日の Commentaire d’écoute (聴取のコメントという聴いた事を書き取るもの)の授業では13世紀終わりのポリフォニーを聴きました。2週間前に聴いたルネサンスのシャンソンと同じ形式ではありますが、各部分がずっと短いのと響きの色が全く違うので別のもののように聴こえます。さらに同じ形式の14世紀の曲も聴きましたが、響きがまた違います。

先生は「時代による色の違いに注意するように」とおっしゃいました。最初の13世紀終わりの曲の時には「まずこの曲の時代はわかるかな?」という質問がありました。短いので目まぐるしいのもありましたが、その目まぐるしさと同時に感じられたのは使われている音程や動きが明らかにルネサンスのものとは違うことです。

このように、音楽史を意識しつつ音楽を聴く時は、時代の持つ色を感じることができます。

ピアノソナタでも交響曲でも古典派のハイドンとベートーヴェン、またロマン派のシューベルト、シューマンと時代が移るにつれて色が変わります。シューマンの聴いたことのない交響曲を聴いて「これはハイドンだよね」と思うことはありませんし、ハイドンのソナタをシューベルトのものと感じることはないはず。

そしてこの違いは作曲家の個性というだけではなく、時代の影響が大きいものです。

我々が音楽を味わう時、鑑賞する時、ただなんとなく聴くのではなくその音楽の美しさを感じ取ろうと聴くはずです。その時に時代の色を考えられることで鑑賞の幅が広がります。それは美術館で予備知識なしにただ絵画を見るのではなく、多少の予備知識(美術館内の説明でもいい)を得て時代の特徴を捉えつつ見るようなものです。

時代の色を感じ取るためにはまず色々聴くことが大切になります。そして聴く時に「これはハイドンだな」「これはブラームスだな」と最初から思って聴くことの積み重ねで色を感じ取れるようになっていきます。さらに一歩進んで、たまたま耳に入ってきた曲を「これはどの時代だろうか」と考えながら聴くことで、自分が感じ取ってる色に確信が持てるようになります。

美術作品とは異なり音は一瞬で消え去るもの。音楽史として文字の知識を入れるだけでは時代の色は感じ取れません。これが美術館内の説明程度の予備知識で少しは時代の特徴を理解できる美術作品と音楽作品の違いです。音楽作品はまず聴いてみる。それもただぼんやりと聴くのではなくある一定の気づきを得られるような積極的な聴き方をすることで、時代の色を感じ取れるようになるのではないでしょうか?

フォルマシオン・ミュジカルで行われている聴取分析は、こういった目的があるものと認識しています。

 

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