楽曲分析に必要な力というと、何を想像されますでしょうか?和声を理解している、旋律の作りを読み取れる、構造をすぐにつかめるというところが妥当なところだと思います。しかし、これだけでは不十分です。
楽曲を分析する大前提として、音楽全般について知っている必要があります。音楽史とか、曲のジャンル別のおおよそのこととか。なぜなら、その曲がどういうものなのかを知っていることで、初めて分析をした効果を得ることができるのです。音楽作品は他の作品があってこその存在ということを忘れないでください。
ピアノ協奏曲を分析するのなら、そのピアノ協奏曲の音楽史における位置付けも知っておいて分析をすることで、作曲技法やピアノテクニックなどにも注目をしていくことができるのです。
つまり、楽曲分析をするためには音楽史の勉強も欠かせません。また、分析したものを言葉で表すことも大切になります。
なぜなら、人間は言語によって物事を理解しているので、分析の言語化は楽曲をよりしっかり理解するための土台となるのです。音楽は感じるもので言葉で表す必要はなし、というのは一理ある話ですが、理解するために言語の助けを借りるのも手段としては必要になるのです。
そして、分析には目的があります。作曲家が作曲技法の研究をするために分析をする、音楽学者がその音楽の歴史的位置付けを考えるために分析をするのとは違い、演奏する人の楽曲分析はご自身の演奏に役立てるためのものです。ですから、演奏が前提となります。分析によって、曲の道筋が見えてくる、曲の図面が見えてくるわけですから、今度はそれを自分の演奏に活かします。
私は、ある曲の分析から見えたことから、他の曲のあるフレーズの解釈が変わった経験もあります。フレーズをこう捉えてみるんだ!という新しい見方を得たため、考え方が変わったのです。そして曲の解釈が複雑になったと思います。
このように、曲の分析の結果はその曲だけではなく他の曲にも生きるのです。楽曲分析をやると、音楽作品への見方が変わります。