楽譜は「ただ音符を並べただけ」の記号ではありません。文字がただの記号にとどまらず、言葉として意味を持つように、音符にも作曲家が伝えたいメッセージや情感が込められています。音符を正しく音に変える技術は音楽を学ぶ上で欠かせませんが、真の目標は楽譜から音楽そのものを感じ取り、表現する力を身につけることにあります。
例えば、「りんご」という言葉を見て、果物のりんごを思い浮かべることができるのと同じように、楽譜に書かれた音符を見た時にも、そこに込められた音楽の情景や感情、作曲家の意図を想像できるようになることが重要です。
フォルマシオン・ミュジカルでは、実践的な方法で音楽を学びます。単なる音程や調性の知識を詰め込むのではなく、実際の楽曲を通じて学ぶことで、自然と楽譜に書かれた情報を音楽的に理解できるようになります。例えば、アウフタクトというリズム形式を学ぶ際にも、強拍を感じながら曲を聴き、その感覚を体感的に理解するというアプローチを取ります。
また、楽譜から音楽を読み取るためには、作曲家の背景や時代の影響を知ることも大切です。バッハの音楽が教会の宗教的な背景から深く影響を受けているように、作曲家の人生やその時代背景を知ることで、音楽がどのような意味を持ち、どのように表現されるべきかが明確になります。音楽家同士の地域を超えた影響関係を知ることも、楽譜に込められたメッセージを読み解く助けとなります。
楽典の学習も、「受験のため」だけに限ったものではありません。小学校低学年から楽曲と結びつけて自然に学ぶことで、音楽の構造を理解する力が育ち、日常的な音楽活動にも役立つようになります。
一方で、子どもたちが音楽を学ぶ際には個人差があることも忘れてはなりません。歩く時期が人によって異なるように、楽譜を音楽として理解する成熟度にも個人差があります。そのため、焦らず、一人ひとりの子どもに合ったペースで丁寧に指導することが重要です。
音符はただの記号ではなく、作曲家からのメッセージを伝える「言葉」です。その言葉を正しく、そして深く読み解くことで、楽譜が単なる記号の羅列ではなく、生き生きとした音楽へと変わるのです。