ふとしたきっかけから、ディヌ・リパッティ演奏のモーツァルトのピアノ協奏曲第21番ハ長調を聴きました。この曲は自分で弾いたことがありよく知っているはずでしたが、新しい発見がありました。

ディヌ・リパッティの演奏だったから気付いたわけではないと思いますが、第一楽章の展開部の転調の素晴らしさと共に、第三楽章のハ長調からイ長調に至る部分の和音の使い方に感動を覚えました。こんなに遠くに移動しているのにごく当たり前の顔をして転調しているって、さすがモーツァルト!天才は違う!と思ったのです。

私が勉強した時、C-durのこの曲のある部分がAーdurになっていたことは流石に理解していたはずですが、その転調の手法を、今改めて聴くと「え?こんななの?」と新たな発見に満ちています。ハ長調から偽終始を重ねてイ長調に至る辺りの和声ってなんて美しいの!その美しさを感じられるようになったということは私も成長したということですね。

この第三楽章にはヘ長調の部分もありますから、フラット系、シャープ系が入り乱れていることになります。このような複雑な転調は、じっくり確認はしていませんがモーツァルトの晩年の作品によく見られるような印象を持っています。ニ長調とニ短調、ト長調とト短調の同主調は確かにフラットとシャープの行き来になりますし、ハ長調も属調、下属調がそれぞれト長調、ヘ長調とシャープとフラットになるので、シャープとフラットの両方を使っていることそのものが珍しいわけではありませんが、ハ長調からイ長調、またさらにヘ長調に行くのを聴いていると、その移動の自然な部分に惹かれてしまいます。

今回、(知っている曲とはいえ、今は完璧な暗譜はできていない)この曲の転調の機微に気付けたということは、私の聴く力が伸びているということ。50を過ぎても成長できる!といういい証拠です。

勉強するのに遅すぎるということはありません。