個人的に、クラシック音楽の醍醐味は和声にあると感じています。

対位法で楽曲を作っていたバロック時代の作曲家の作品であっても、曲の区切りはカデンツでできていますし、古典派以降はこのカデンツの積み重ねでさまざまな転調をしています。

例えばモーツァルトの良さは、この和声連結をうまく利用しての思いがけない転調にあります。もちろんコロコロ転がるようなメロディーライン、シンコペーションにも魅力がありますが、この意外な転調を語らずしてモーツァルトは語れないと思っています。

C dur が A dur に転調したり、D dur から A dur を経由してたどり着いたのが B durとか、そういうのに出会うとモーツァルトっていいな、和声って素敵だなと感じてしまいます。特に後期の作品に多く見られて、そんなことも私がモーツァルトの後期の作品が好きな理由かもしれません。

私の師匠は、モーツァルトの最後のソナタを「子供のうちにやる作品ではない」とおっしゃってて、私が中学生の時、当時ついていた先生に与えられてその曲をレッスンしていただきに伺った時に「なんでこの曲をやらせるのよ〜」と渋い顔をされました。

今になるとその理由がわかります。あの曲は和声をある程度勉強した後に、和声の変化を汲み取って演奏することで曲の細かいニュアンスを理解することができるということに気づいたのはここ数年の話です。

和声っていうと「禁則が億劫で」とか「紙の上で勉強したけどよくわからない」という人が珍しくないと思いますが、和声の学習って、紙の上でやるものではないし、禁則を破らないためにあるものでもないんですよ。私が学生時代に1年ほどお世話になった作曲家の先生の個人レッスンは、課題はもちろん紙に書くしかありませんが、和音の解説も私がやった課題も全部音にして説明してくださいました。1年で終わってしまったのが残念なくらいの貴重な時間でした。

和声分析も楽譜に向かってやるのではなく、聴くだけである程度わかるようになると生きた音楽に繋がるんです。聴いた瞬間に全ての和音の度数を書き取るということではありませんが、動きとして、流れとして掴めると曲をさらに深く感じ取ることができます。

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