ソルフェージュ力があるとピアノが「理解できる」ようになる

日々ピアノを教えている中で、ソルフェージュ力がある子とそうでない子の違いを感じる場面は多くあります。耳コピで弾ける生徒を教えたこともありますが、リズム感はいいものの楽譜を読める生徒さんより時間がかかるなと思いました。

それに対してコンセルヴァトワールで他の楽器を学んでいるお子さんは、しっかりとしたソルフェージュ教育を受けていることが多く、その力がピアノ演奏にも良い影響を与えています。

鍵盤にはまだ不慣れで、スムーズに指が動くというわけではなくても、リズムの正確さや、音を間違えたときの気づきの速さなど、音楽を「聴く力」と「理解する力」がすでに備わっているのです。このような基礎があると、演奏がうまくいかないときにも、自分で何が違ったのかを把握しやすく、修正も早くできます。

読譜力と演奏力は別もの。でもソルフェージュ力が両方をつなぐ

「楽譜が読めるから、ピアノが弾けるはず」と思われがちですが、実際には読譜力演奏力はまったく別のスキルです。どんなに譜読みが得意でも、それを指に落とし込む練習が足りなければ、演奏はぎこちなくなります。

でも、譜読みができないと練習がそもそも進みません。ソルフェージュで培ったリズム感や音の記憶力は、こうした場面で大きな助けになります。たとえば、拍子を正確に感じられることは、最初の一歩としてとても大事なこと。テンポがぶれない、拍を正しく取れる、そうした積み重ねが、演奏全体の安定感につながります。

フォルマシオン・ミュジカルが育む耳とリズム感

ヴァイオリンを習っている我が家の次男は、最近はピアノにも興味を持ち始め、耳コピで少しずつ弾くようになりました。今は、映画『アメリ』でおなじみのヤン・ティエルセンの曲に夢中です。楽譜が家にあったのでメロディーはそれで確認しつつ、自分の耳を頼りにピアノで再現しています。

このときに大きな支えとなっているのが、幼いころから取り組んできたフォルマシオン・ミュジカルの学習です。日本でいうところのソルフェージュ教育がバッチリ入った学習になっているので、歌う・書く・聴き取る・リズムを打つなど、楽譜を読む基礎力はしっかりついています。

特に、拍感やフレーズの捉え方が自然と身についているため、リズムが取りにくいこの曲でも正確にリズムをつかみ、安定して弾くことができます。これは、ただ「耳が良い」だけでは生まれない力です。ソルフェージュ力が音楽的な骨格を形作っているのだと、改めて感じます。

ソルフェージュ力は将来の音楽学習の土台になる

もちろん、右手と左手で異なる動きを同時にこなすことはまだ難しく、本当に弾くためには課題もまだまだありますが、特にレッスンらしいレッスンを受けていない中でここまで弾けているのは、本当にすごいことだと思います。

音楽を学ぶうえで、ソルフェージュ力というのは「目立たないけれど確実に効いてくる」土台のようなものです。これがあるかないかで、学びのスピードや深さが変わってきます。先に進めば進むほど、その違いはより顕著になっていくことと思います。

まとめ:すべての子どもにソルフェージュを

ピアノだけでなく、どの楽器にも共通することですが、音楽を楽しみながら学ぶためには、ソルフェージュ教育が不可欠です。耳で感じ、心で理解し、体で表現する力を育てる。それが音楽における「自由さ」や「自信」へとつながっていきます。

すべての子どもたちに、早いうちからソルフェージュに触れる機会を。
それは、将来の音楽の旅を、もっと豊かで楽しいものにしてくれるはずです。