楽譜を「読む」とはどういうことか?

「楽譜が読める」と聞いたとき、多くの人が思い浮かべるのは「音符を見て音の高さがわかること」でしょう。しかし、本当の意味で楽譜を読む力とは、音の高さだけでなく、そこから音楽そのものを読み取る力を指します。これは単なる視覚情報の読み取りを超えて、音楽の構造を理解し、演奏に活かすための重要なスキルです。

耳コピと楽譜読みの違い

耳コピで演奏していると、どうしても曖昧になりがちなポイントがあります。そのひとつが、「同じ音形の繰り返し回数」です。特に拍子が変化しない曲では、拍に沿った繰り返しが基本構造として存在しています。この構造を把握できるかどうかで、演奏の正確性に差が出てきます。

拍子感と繰り返しを感じる力

フォルマシオン・ミュジカルやソルフェージュの学習を通じて、拍子感や音形の繰り返しに対する感覚が養われます。楽譜を読める人は、そうしたリズム的な構造を自然に感じ取れるため、いちいち「1つ、2つ」と声に出さなくても、身体で回数を捉えることができます。

一方で、楽譜を読む訓練をしていないと、このような「繰り返しに対する感覚」が非常に曖昧になります。これは演奏の安定性や音楽的な理解に大きく影響します。

音楽は数の芸術

音楽はしばしば「数の芸術」と呼ばれます。バッハの作品を数学的と評する人もいますし、実際に拍子や音程は数値で表現されます。楽曲分析をすると、その背後にある数的な規則性や美しさが浮かび上がってきます。

フォルマシオン・ミュジカルでは、数的構造を感じ取り、それを表現につなげる力を育みます。楽譜を読むという行為は、数に敏感になることでもあり、それが演奏の正確性を支える柱となります。

作曲家の意図を表現するために

繰り返しの回数には、作曲家の意図が込められていることが少なくありません。任意の繰り返しが許される場面もありますが、多くの場合は楽譜に明確に記載されており、その回数を忠実に守ることが音楽表現において重要です。

楽譜に書かれた情報を読み取れなければ、その意図に応えることはできません。だからこそ、演奏の前に少なくとも楽譜に目を通すことには意味があります。

フォルマシオン・ミュジカルの教育が支える力

実際、耳コピ中心の生徒に対して「この音形は何回あるか数えてみよう」と問いかけると、楽譜が読めない子でも形の繰り返しには気づくことが多いです。形を見て数える――この基本的な「観察する力」こそ、楽譜を読む上で最初に養いたい力です。

そしてこの観察力を支えるのが、フォルマシオン・ミュジカルやソルフェージュ教育です。すぐに弾けなくても、楽譜を見て分析し、そこから音楽的理解を深める。このプロセスが、楽曲分析の入口であり、豊かな演奏表現の土台になります。