フランスで誕生したソルフェージュに代わる新しい総合基礎音楽教育である、フォルマシオン・ミュジカルについて
フォルマシオン・ミュジカルとは?
フォルマシオン・ミュジカル(la Formation Musicale。略してla FMと言われることもある)は1978年にフランスの文化省、Ministère de la Culture が制定した総合基礎音楽教育です。現在、フランスの公立コンセルヴァトワールではソルフェージュに代わりフォルマシオン・ミュジカルの授業が、楽器のレッスンと並行して、あるいは楽器のレッスンを始める前から15人程度定員のクラス授業として行われています。
元々は、演奏家が自分の弾く楽器以外の音楽について知らないということを憂えたことから制定されたこの教育は、従来の、日本でもよく知られているソルフェージュに加えて、理論や楽典的な知識、楽式や楽器のこと、音楽史にも触れるものとなっています。
フランスではどういう風に行われているの?
コンセルヴァトワールの本コースに登録できる7歳(小学校2年生)から授業に参加することとなります。飛び級する子で6歳から入るというケースはありますが、基本的に幼児の間はエヴェイユ・ミュジカル(音楽の目覚め)という、音楽を身体で体験するクラスがあるだけです。
そして、日本の文科省の教育カリキュラムほどの縛りはないものの、一応学年ごとの習得事項の目安があり(コンセルヴァトワールによって差がある)、第一課程、第二課程(いずれも3年から4年かける)の終了時は課程終了試験という、自分のクラス以外の先生の前での実技試験を含む、正式な試験に合格することでその課程を終わったことが認められます。アマチュアでも第三課程で1年間のフォルマシオン・ミュジカルの履修が必要となっているほど、フォルマシオン・ミュジカルの習得は大切なものとされています。
学年ごとの習得事項の目安があるということは、各学年終了時に習得状況が不十分とみなされた場合、同じ学年を再度履修する(つまり留年)ことにもなります。
もちろん、個人の先生でレッスンに組み込んでいる方も多くいらっしゃいます。
フォルマシオン・ミュジカルでは何を学ぶの?
表現に必要とされる音楽言語を身につけるのが最大の目的です。音楽言語は表現をするための道具であり、つまり表現を的確にする手段を身につけるために必要なものです。表現芸術だから感情をそのままただ表現すればいいというのではなく、音楽言語の取り扱いに熟達して初めて効果的に表現することができるのです。
そのためには、学校の国語の授業で実際の文学作品を利用して言葉を学ぶのと同じくフォルマシオン・ミュジカルでは実際の楽曲を使って音楽言語を学びます。言葉を学ぶ段階では漢字や文法の練習問題をやるように、譜読みやリズムの課題をやるといえますし、国語の授業で言葉の使い方(文法)を少しずつ学ぶように、音楽の文法と言える楽典を少しずつ学びます。
そして音楽と仲良くなるために、音楽のさまざまなことを学びます。作曲家のことや音楽がどうやって作られているか、あるいは楽器についても少しずつ学びます。音楽を発することとしては即興もやります。
こういった学習を通して大切にされているのが、音楽耳を育てるということ。これは絶対音感をつけるということではなく音を聴き分ける、つまり音と音の間という意味での音程や音の質を判断する力をつけます。つまり、自分の音を聴く習慣をつけることとなります。自分の出している音がずれているか正しいかを聴き分ける活動もありますし、実際の楽曲を利用した聴音課題もあります。フォルマシオン・ミュジカルの聴音は音の高さを聴き取るのではなく、音楽を聴き取る内容になっています。
どういった音楽家が育つの?
ズバリ、音楽に対する幅広い知識を持った音楽家です。フォルマシオン・ミュジカルが制定された頃に多かった「自分の楽器のことしか知らない」音楽家ではなく、音楽全般をよく知っている音楽家が育ちます。
自分の楽器の演奏だけできても、音楽を知らないことには音楽家とはいえない、という考えから来ています。
音楽の勉強は長くかかるもの
フォルマシオン・ミュジカルを一通り終えるのに本当に最短期間で7年。10年近くかかっても不思議はないほどの内容です。それだけ音楽の学びは多彩で深みがあるともいえます。
フォルマシオン・ミュジカルには音楽生活を充実させるために必要な学びが多く含まれています。フォルマシオン・ミュジカルを教えることができなくても、レッスンに取り入れたい内容でいっぱいのフォルマシオン・ミュジカル、あなたのお教室でも始めてみませんか?